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トンボ田ものがたり

トンボ田ものがたり_d0021152_22299.jpg田植えから1ヶ月。初夏の田んぼ。
この時期なので、
赤トンボ(秋アカネ)のヤゴと思われます。
稲刈りの後の田に、
産みつけられた卵が、
水を張られた田んぼで孵り
初夏、巣立っていきました。

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暑い夏を涼しい山で過ごし、
秋の田に戻ってくるといわれています。

稲刈り後の、赤トンボの飛ぶ景色は
ニッポンの美しい景色、懐かしい景色。
トンボのいることの豊かさ。
            photo / 2004.10
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こんな昔話を知りました。

 むかし、ある村に、
トンボ田と呼ばれている田がありました。
田植えが終わって、暑い夏がくると、
トンボ田にはいつも赤トンボが
いっぱいに舞い飛んでいました。
トンボ田では、まわりのほかの田んぼと違って、
ウンカという大害虫が発生して、稲を枯らしてしまうことなんてありませんでした。
 ある年のこと、梅雨になっても雨が降らず、ウンカが田んぼに飛んできません。
お百姓たちは言いました。
「雨が少ないのは困ったものだが、ウンカがやってこないのはせめてもの幸いだ。」
トンボ田のお百姓は怒りました。「馬鹿を言うんじゃない。
ウンカが飛んでこないと、大変なことになるぞ。ウンカは田んぼのこやしなのに」
ほかのお百姓たちは笑いました。
その年はウンカの被害もなく、米は豊作でした。
「トンボ田さんは心配しすぎだよ」そう言われて、トンボ田のお百姓は黙りました。
 次の年になりました。順調に雨が降り、田植えも終わりほっとする間もなく、
ウンカがびっくりするほど飛んで来ました。
やがて、村の田んぼが、ウンカの大発生で、どんどん枯れていきました。
「どうして今まで一度もウンカでやられたことのなかったトンボ田までも、枯れたんだ」
とみんなはささやきました。
トンボ田ものがたり_d0021152_0362060.jpg トンボ田のお百姓は言いました。
「去年、ウンカが飛んでこなかったから、
ウンカを食べたりする益虫や、ウンカに
寄生する益虫が死に絶えたのだろうな。
トンボもエサがなかったから、
減ってしまった。だから今年は
ウンカだけがすくすく育つ田んぼに
なってしまったんだ。」
まわりのお百姓はうなずきました。
「そう言えば、夏虫はこやしになる、
と言われていたのは、このことだったのか」とため息をつきました。
 それから、みんなで、虫たちが増えるようにと努めたのですが、
トンボがもとように飛び回る田んぼになるまでに、五年の年月がかかりましたとさ。


  参照文献:「田んぼの学校 入学編」宇根豊 著 企画/農村環境整備センター(農文協)

土の会white 2005.6
「自然のバランス」 「ヤゴvsオタマジャクシ トンボvsカエル」 「赤とんぼの唄」
by tutinokai | 2006-06-25 13:45 | いのちの環
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