稲霊(いなだま)

d0021152_2242478.jpg去年もみかけた、
稲穂についたまるい黒い玉。
カビ臭がして、触ると手に黒い粉がつきます。
手でつぶすと、細かい粒子が舞い散ります。
そしてなかには、色が変わった稲籾。

稲籾を包んだ、まっくろくろすけ。
この正体は?

イナコウジ病(稲麹病)。
稲穂に、このイナコウジ菌がつくと、養分がとられてしまう。
周囲の籾の成長にも影響があるといわれる。
穂を結ぶ7〜8月に雨が多いと発病しやすくなる、といわれる。
確かに、今年は雨が多くて、日照も少ないようです。

そして...
調べてゆくと日本の食文化の歴史に辿りつきました。

イナコウジ病。イナ「コウジ」菌。「麹」。日本の食の原点ともいえる「麹」。
麹とは、米や、麦、大豆などの穀物や精白するときに出来た糠などに、
コウジカビなどの食品発酵に有効なカビを中心にした微生物を繁殖させたもの、とある。
麹菌を培養して得た胞子を乾燥させたものが、種麹(たねこうじ)。
米、麦、大豆などの穀物を蒸して、
それに種麹をつけて培養すると、表面に麹菌が繁殖する。
米で作るものが「米麹」。麹菌はカビの仲間です。

麹菌はカビの仲間なので、湿気を好む。
湿気の多い東南アジアと東アジアで麹は、もりもり発生する(アジア以外には麹はない)。
なかでも、日本は、「撒麹(ばらこうじ)」というもので、
他の国は「餅麹(もちこうじ)」。処理法と原料に違いがあります。
そうして日本の麹、「撒麹」は、日本独自の文化をもって今に至りました。


さてさて、イナコウジ病(イナコウジ菌)。
稲麹は、「稲霊(いなだま)」ともいわれ、
古の本には、
「麹子米(きくしまい)」というもので酒麹を作ったという記述があるそうです。
麹子米=稲麹のこと。
じめじめ日本の、自然のなかには稲麹があった。散麹の原型。

そうして、昔から「麹」は暮らしのなかにある。
お米から、日本酒、甘酒、酢。大豆からは、味噌、醤油...
日本人になくてはならない食の原点、「麹」。
麹菌は、必須アミノ酸やビタミン類などを作る。
麹には、人間が生きていくために不可欠な栄養がたくさん含まれている。
 

たしかに、イネコウジ病が多いと、稲穂が実らず困るのだけれど、
じめじめだったからこそ、イネコウジ菌が生き、
麹を利用し、日本人の今の食に至っている。
と、考えると、「ああ、困ったな」だけではない奥深いものを感じます。

稲麹は、「稲霊(いなだま)」。
昔の人は、ちゃ〜んとわかっている。
自然への敬いをもって暮らしてきたことがわかります。


補足トリビアですが、
イネコウジを食べるガの幼虫(「ヒメクルマコヤガ」)もいるそうです。
人間だけが稲麹を必要としているわけではないということでしょうか?

*「稲霊」は、稲全体をいう表現でもあるようです。
 (稲の中には、稲霊(いなだま)がいると信じてられていました)

    参照HP:フリー百科事典 ウィキペディア(Wikipedia)「麹」
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by tutinokai | 2006-09-07 11:41 | いのちの環
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