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田んぼに落ちた卵の行く末

カマキリの卵が割れて田んぼに落ちていました。

『なぜだ、なぜなんだー?』

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この卵(正しくは、この中にひとつひとつの卵が
入っているので、「卵鞘(らんしょう)」
又は卵嚢(らんのう)という)は、
その形から、オオカマキリの卵。

カマキリの卵鞘は、
大きさや形がその種ごとに違うのでした。


卵鞘は、スポンジ状になっていて、触ると弾力があってクッションみたい。
そうして、空気を含んでいて、外からの衝撃につよく、中にある卵を守っている。
よく、カマキリの卵のある位置より上にその年の冬、雪は降らないといわれている。
寒さの苦手なカマキリの卵。卵鞘は、その断熱効果で、卵を守っています。

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成虫の立派なオオカマキリは、
秋の田んぼ、稲穂のなかでよくみかける。
イナゴを捕まえていたりする。

*成虫のカマキリの様子について
「鎌切 カマキリ」土の会white 2005.8
「hunter」土の会white 2005.9
「生きるための術」土の会white 2006.8

そうして、秋に卵を産む。
卵を産む場所は、低い木や、細長い枯れ草の茎。背が高く、そのまま冬を越す植物。
刈ってしまう稲には産まない。かしこいカマキリ。
田んぼの脇の水路の向こうには、セイタカアワダチソウやススキ。
オオカマキリが卵を産める環境があります。
(卵を産んだら、成虫は死んでしまいます。そうして、いのちを次の世代に託す)

『やっぱり、田んぼにあるのはヘンだなあ...?』

しかも、卵鞘は割れて落ちている。
卵鞘は層になっていて、なかに卵が産みつけられている。なので、卵はみえない。


『卵はまだ入っているのかな...?』

4月末から5月にかけて、スポンジ状の卵鞘をとかし、カマキリの赤ちゃんは出てくる。
今は3月。時期も違う。きっとまだ、卵が入っているんだろうな。


『あの、強いカマキリに天敵がいるのか...?そいつのしわざか!?』

調べてみると、いました。天敵。
その名もそのまんま、「カマキリカツオブシムシ」。
乾燥した動物質(「カツオブシ」の由来)を、カマキリの卵を、好んで食べる甲虫。
カマキリカツオブシムシは、卵をカマキリの卵鞘に産みつけ、
幼虫は、なかにあるカマキリの卵を食べて育つという。
大きなカマキリもたじたじの小さな虫。


『落ちている卵は、カマキリカツオブシムシのしわざではないみたい...』

卵鞘のなかには、卵が200個。ゆえ、200匹以上もの幼虫が孵化します。
こわいつよいカマキリも、こんなに多く卵を産む。
それだけ成虫になるまでの困難があるということ。


...まさに今、困難にあっている田んぼに落ちている卵。
『なぜだ、なぜなんだー。どうやって此処に来たのだろう...?』

生き物が運んだのでなければ、風などの自然によるものか、人の手によるものか。

...なぜ?を考えてゆくと、結局わからない。
だけど、田んぼに落ちた卵もまた運命。この卵が無事に孵るかはわからない。
いのちを繋げてゆくことは難しい。

田んぼに落ちた卵の行く末_d0021152_0473630.jpgカマキリがたくさんいるのは、
カマキリの卵がたくさんあるのは、
そのエサとなる生き物が多いということ。
いのちのにぎわいがあるということ。

いろんなハプニングがありながらも、
そうして自然は、いのちは、
その先へ紡がれてゆくんだなあ。

だからこの自然を大切にしたい。
その未来へも、ずっと。
by tutinokai | 2007-03-18 13:20 | いのちの環
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